ミツヤコーポレーション機能性糸事業部トリポーラス練込み糸シリーズ

糸の種類
- トリポーラス練り込み糸 -

KC-167B

40番手(綿番)
レーヨン100%

KC-167B

K7528

40番手(綿番)
レーヨン50%
綿50%

K7528

K7529

40番手(綿番)
レーヨン50%
エコポリエステル50%

K7529

これらの糸はトリポーラスをレーヨンに練り込んでおります。これらの糸を使用しトリポーラスファイバーの基準を満たした製品はトリポーラスファイバーの商標を付けることが可能です。(諸条件に つきましてはご相談下さい)。

  • トリポーラスはソニーの商標です。

糸の特徴
- 実験結果からわかる消臭力 -

消臭スピード

一般的な消臭試験は120分後の消臭率を測定しますが、
消臭スピードを見るために10分後、 120分後の消臭率を測定しました。

生地の種類 アンモニア 酢酸
  10分後 120分後 10分後 120分後
トリポーラス天竺Tシャツ
レーヨン50% 綿50%
T
89% 99% 87% 99%
市販下着(消臭機能付き)A 37% 87% 61% 81%
市販消臭TシャツB 76% 94% 80% 99%
  • T:トリポーラス天竺Tシャツレーヨン50% 綿50%
  • A:市販下着(消臭機能付き)
  • B:市販消臭Tシャツ

消臭容量

消臭試験はアンモニア濃度を100ppmで測定しますが、
消臭容量を見るためにアンモニア濃度を100~500ppm、120分にて消臭率を測定しました。

  100ppm 200ppm 400ppm 500ppm
トリポーラス天竺Tシャツ
レーヨン50% 綿50%
T
99% ≧99% 96% 92%
市販下着(消臭機能付き)A 37% 78% 68% 57%
市販消臭TシャツB 76% 85% 70% 65%
  • T:トリポーラス天竺Tシャツレーヨン50% 綿50%
  • A:市販下着(消臭機能付き)
  • B:市販消臭Tシャツ

製品サンプル
- トリポーラス練込み糸を使った
生地及び製品 -

  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品
  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品
  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品
  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品
  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品
  • トリポーラス練込み糸を使った生地及び製品

「未来を作る、
delightful smellウエアを夢見て」

トリポーラス練込み糸研究開発担当 鈴木利正氏
トリポーラス練込み糸研究開発担当 鈴木利正氏

ソニー株式会社が独自に開発した多孔質炭素材料「トリポーラス」を使い、ミツヤコーポレーションが今までのファッション界にはなかった消臭機能を持つ繊維製品を誕生させている。その開発のきっかけを作った、ミツヤコーポレーション執行役員であり、社長室室長で研究開発を担当する鈴木利正氏に話を聞いた。

植物由来の多孔質炭素素材から、
ミツヤコーポレーションが生み出したものとは。

そもそもファッション品の物流や商品生産を請け負っていたミツヤコーポレーションが、なぜ消臭機能のある繊維製品を手がけることになったのでしょうか?
ミツヤは江戸時代から晒を作っている会社でしたが、昭和になってから物流事業や商社事業へ事業転換しており、2010年からは機能性や抗菌加工などの事業を開始しておりました。また、2017年私が入社してからはNioi-X-lab.という臭い問題を切り口に製品を解決する事業を開始しました。ラボ立ち上げの頃になにか良い消臭素材は無いものかと探求していた頃に、知人のご紹介を得て2017年にトリポーラスと出会いました。
お話を聞くと、トリポーラスはリチウムイオン電池の研究開発の過程で発明され、吸着性能が優れていることから、他業種で使えないか検討している所でした。トリポーラスは通常の活性炭に確認できるミクロ孔(直径2nm以下)という穴に加え、もう少し大きなメソ孔(2〜50nm)とマクロ孔(約1μm)いう三つの穴を持っている。そのため従来の活性炭では吸着しづらい高分子を吸着するそうです。私は消臭素材で高分子を吸着するという話は聞いたことがないなと思い、おもしろいものが作れるかもと考えました。そこでぜひ試させてほしいと話し、トリポーラスを使った糸の検討を開始しました。
ミツヤコーポレーションが最初に取り組んだことは?
トリポーラスのサンプル自体は、繊維に練り込むにはサイズが大きく、粉砕加工が必要でした。そこで、どうやって糸に練り込める大きさまで粉砕するかを、綿(ワタ)を作る会社様と相談しながら取り組みました。さらに機械に黒い粉をいれてしまうと、その後の洗浄が非常に手間になるため、なかなか引き受けてくださる会社がおらず、探すのが大変でした。最終的には、備長炭を素材に綿を作っている会社様にお願いし、トリポーラス入りのレーヨンの綿(ワタ)を作りました。
しかし、ワタが出来ても、黒い糸を作ってくださる会社様も少なく、こちらも備長炭糸を製造しておられる会社様にて糸作り(紡績)をおねがいしました。トリポーラスの添加量や、ワタの繊維の太さと長さを両社と相談しながらやっと、2017年9月にトリポーラスを練り込んだ糸の試作品が出来上がりました。
ついにトリポーラスを練りこんだ糸を作ったんですね。
はい。まずは生地にするには糸が大量にいるので、ふくらはぎ用のサポーターを奈良の工場様にご協力頂きまして、いくつも作って頂き2017年9月に初めての消臭試験にかけました。最初はどんな機能があるか、幅広く見る必要があったので12種類の悪臭物質に対する消臭試験や、対洗濯性耐久試験。トリポーラス「含有量別」生地の消臭力の測定。大阪府の産業技術研究所様で連続式消臭試験方法による他社製品との比較試験。そして、洗濯、天日干し、室内干しでどれだけ回復するかを測定しました。色々調べていくうちに消臭スピードが他社製品より優れていることがわかり、短時間(10分間)消臭をトリポーラスの特徴の一つと考えました。また高濃度条件下での消臭力も他社製品より優れていることがわかり私たちの予想を超える結果でした。しかも洗濯すると、その効果が回復するのには驚きました。
つまり消臭スピード、消臭容量ともに文句なしの結果というわけですね。
はい、おっしゃる通り。それらの結果はソニー、ミツヤ、大阪産業技術研究所の共同研究という形で、2018年のにおい・かおり環境学会にて発表しました。
そこから商品化の可能性が見えてきたわけですね。
はい。ここまでよい結果が出せる素材であるならば、必ず良い商品が作れると考えました。
まずはレーヨンという素材がよく使われている分野での展開を考えましたが、白を作って欲しいというリクエストも多く、そこが頭の痛いところでした。
  • エクササイズ風景
  • エクササイズ風景
  • エクササイズ風景

従業員もトレーニングルームで汗をかいて「ニオイ」協力

これからの新素材、
トリポーラスを使った繊維製品の誕生!

課題は残されましたが、これまであった活性炭以上のスピードと容量で匂いを吸着するトリポーラス。それを糸や生地にしたミツヤコーポレーション。そこからの展開は?
ミツヤとしてどのような形で対外的に発表しようかと考えた結果、日本の展示会より海外の展示会、しかもスポーツの祭典で発表しようと考え、ミュンヘンで開催されるISPOへの出展を決めました。ソニーもブースの設営やデザイン、当日の説明など協力してくださりました。当日はたくさんの方にご来場いただきました。ISPOには2900ものブースが出ていましたが、おそらく一番集客したのでは?と思います。
2月の展示会は大成功。次はいよいよ商品化ですね。
展示会中に名刺交換した国内外の方々とのやりとりが始まりました。4月ぐらいまでは新規の小売業者、アパレル、商社の方々とのやりとり。またそれとは別に私どもは糸を作るメーカーなので、ミツヤの糸を使って新しい生地を作ってみたいという生地メーカーの方々とのやりとりが増えてくるという、うれしい結果となりました。
そして、ソニーがトリポーラスを使ったアパレル商品の性能を担保するトリポーラスファイバーの評価基準を作成したことで商品化が進みました。
トリポーラスを使ったサンプルを作りましょうと話してから約1年。トリポーラスを練りこんだワタを使い様々な糸を用意することに成功し、トリポーラスファイバーの基準に到達しました。
展示会から約3ヶ月を経て、15社のメーカーが生地を作ってみたいと手を上げてくれたことで、消臭に最適な肌着用の生地を中心に多くの種類を作っていただいたことから始まり、ものすごいバリエーションとなりました。たとえばジャケット用にはダンボールニットという表地と裏地を二枚重ねた生地を作れるようになりました。表地にはまだトリポーラスでは作れない白い生地、裏地にはトリポーラスが使われています。現在の糸はレーヨンであるため、ポリエステルとミックスすると強度が出るし、コットンとミックスすると自然の風合いがでてカジュアルな感じになります。他にもデニムやスポーツシーンに使えそうなメッシュ生地も出来上がりました。いろいろな試みをして生地のバリエーションを増やしてくださる生地屋さんは心強い味方であり、本当にありがたいことです。現在もありがたい事に協力生地メーカー様は増え続けております。また糸の改良をしてくださる会社様や生地の加工で実験にご協力いただける会社様もおられ大変有り難いです。開発スピードが大幅に上がったと実感しております。
では改めて今後の改善点を伺えますか?
現在は糸の改良に取り組んでおり、多色展開、強度等の改良に取り組んでいます。また、消臭以外の機能性についてもいくつか発見しており、今後の商品展開につながると期待しております。
また、トリポーラスはレーヨンだけに練りこんでいたのですが、汗の匂いにつねづね対応しているスポーツ業界からは、ポリエステルで開発して欲しいという要望が多く、1年がかりでなんとか練り込みに成功しました。現在こちらの機能性について幅広く調べているところです。
そして一番大きな課題が価格改良です。やはり値段がまだまだ高い。そのためには海外での生産をスタートさせようとしています。これだけ反響があり、海外でも注目を集めるトリポーラスファイバーだけに、コストさえ下がれば、あらゆる分野で活躍する生地になると信じています。
実際、2019年の秋、ソニーのグループ会社でトリポーラスファイバーの作業用ユニフォームを採用していますね。
はい、ソニーのグループ会社で清掃やオフィス環境整備業務を担う「ソニー希望・光」様です。首都圏のオフィスの清掃を担当していらっしゃるスタッフがユニフォームの着用を始めました。オフィスの清掃なら空調が効いているじゃないかと思われがちですが、実際作業をする場は冷房が不十分な場所も多い。トリポーラスを使ったTシャツは汗もすぐに乾き、匂いが気にならないうえ、汗のためのインナーなどを着る必要もないので、作業面でも動きやすいと好評のようです。
将来的にミツヤコーポレーションがトリポーラスファイバーで目指すものは。

匂いの問題は人が口に出しにくく、それでいて多くの人が不快に感じたり、ストレスになりがちなものだと思います。たとえば高齢者の介護の場、また密閉空間、また大量の汗をかくスポーツシーンもそう。さらにダウンや空調服といった洗いにくく、密閉性の高い服にも匂い問題はつきまといます。近年、禁煙が当たり前の世の中になったことで、人々の匂いへの感度は高まるばかりです。我々は特に高齢化社会に匂いからアプローチができるのでは? と考えています。たとえばサニタリー製品の進歩で高齢者が尿漏れなどの心配はなくなったとしても、匂いに躊躇して積極的に外出できない人が多いと聞きます。こういった方々に、もっと安心して外出できるよう、医療や介護のシーンでもいずれトリポーラスが活躍する日を信じています。僕らはトリポーラスで、楽しい高齢化社会になるよう技術で貢献したいなと思っているのです。また臭い以外の優れた機能性も持ち合わせております。その一つが抗菌活性です。更にこの機能を探求し、感染症対策に役立つような製品が生まれればと期待しております、今後の展開にワクワクしております。やることはいっぱいあります。

トリポーラス練込み糸研究開発担当 鈴木利正氏

インタビュアー:今井 恵

プロフィール
フリーランスのエディター&ライターとして女性誌を中心に活躍。
また幻冬舎「GOETHE」では、数々の経営者のインタビューも行う